低レベル放射性廃棄物の液体、放射性物質を含む廃水を減容可し安定化させる最も現実的な処理方法は固化処理です。これは日本でもアメリカでも共通するところです。液体状の放射性廃棄物を固化する方法として歴史的にみて、セメントや石膏のようなものが使用されてきました。吸水性のあるバーミキュライトやその他の粘土は吸い取ったものが漏れて出る心配がありました。固化してからの次の場所での二次汚染の問題です。
20世紀末に米国オハイオ州のマイアミスバーグの米国エネルギー省のマウンド施設で旧来のセメントやその他の吸水性樹脂に替わる素材の試験が行われ、コスト、作業者の安全性、効率の良さ、長期間の安定性などの観点から採用されたのが吸水性樹脂のウオーターワークスSP-400(WaterWorks SP-400)で米国の原子力発電所、原子力関連施設、核開発の跡地の除染に標準的な固化方法として広く採用されています。米国の原子力関連企業ではGE、ベクテル(Bechtel)、ショー(Shaw)グループ、フルーアコーポレーション(Flour Corporation)が既に採用しています。
使用に際しては熱処理は不要ですし、機械的な混合も不要ですし、旧来の吸水性樹脂にあったような粉塵の発生もなく作業される方も安全です、コストも作業時間も大幅にカットでき大量の処理が可能になりました。基本的にドラムの中に入れるだけです。極めて短時間で固化します。総重量もほとんど増えません。重量が軽くなることによる作業効率のアップは大きいです。
吸水性樹脂(吸水性ポリマー)としてウオーターワークスを他の、吸水性樹脂と比較した場合の特徴は、既存の吸水性樹脂が用途の性質上(例えば紙おむつ)、使い捨てを前提に製造されているのに対して、元々農業用で作られていますので土中で長期間有効な必要があり耐久性も含めて極めて丈夫なところがあります。
ウオーターワークスの使用上でメリットとなる物性は以下です。
(1)重量比で100-150:1の高い吸水性を持つ。
(2)使う場合に機械的な攪拌が必要がない。要するにかき混ぜなくてもOK。
(3)廃棄物の体積がほとんど増えない。
(4)非常に長い間、ゲルの状態で廃棄物を保持できる。バーミキュライトのように漏れない。
(5)二次的な汚染の可能性がほとんどない。
(6)容器の重量の増え方が小さい。
わが国で液体状廃棄物の固化処理に使用される方法はセメント固化、アスファルト固化、プラスチック固化などですがいずれの方法と比べてもウオーターワークスの方が優れています。
セメント固化は安価ですぐれた固化剤ですが、事前、事後に練り混ぜる工程が必要になります。米国のマウンド施設での試験でもセメントの場合は55ガロンのドラムに25ガロンの廃水しか入りませんし。固めるために入れるセメントの総重量も相当な重量になります。これの改良版として考えられた他の吸水性樹脂の場合でも90kg投入していますが、ウオーターワークスの場合約4kgの投入で済みます。
アスファルトの固化もアスファルト自体が可燃性ですし、専用の設備が必要ですし、固化体の長期耐久性に関して微生物による分解、性能の劣化やガス発生の可能性があります。
熱硬化性あるいは熱可塑性プラスチックの固化はプラスチック自体の可燃性がありますし、セメントよりは重量の減量ができますがウオーターワークスには遠く及びません。
このように作業される方々にとっても安全で効率の高い方がウオーターワークスSP-400を使った低レベル放射性廃棄物の液体(廃水)の固化です。